先日、当協会にお墓じまいと海洋散骨のご依頼をくださったのは、中津市在住の70代の兄弟でした。
お二人ともご高齢でありながら、凛とした佇まいで「父と母を海に送ってあげたくて」とおっしゃった姿がとても印象的でした。
■ 墓じまいを選んだ理由
ご兄弟のお父さまは約50年前に、そしてお母さまは20年前に亡くなられたそうです。以来、お墓は地元の共同墓地にありましたが、将来の継承について考えたときに「自分たちの代で整理しておくべきだ」と判断されたとのこと。
長男である兄は、「娘に迷惑はかけたくない。だから墓じまいをして、海洋散骨で両親を見送る」と、はっきりとした口調で語られました。
「父も母も海が好きだった。だったら最後は自然に還すのがいい」と、弟さんも穏やかに頷いておられました。
■ 兄弟2人での乗船と散骨
当日は、お二人そろって乗船。
風はなく、波も穏やかな晴天の朝でした。
ご兄弟は、何度も遺骨の入った容器を見つめ、「ありがとう」と言葉をかけながら、静かにご両親を海へとお見送りされました。
その光景は、ただの“儀式”ではなく、兄弟それぞれが背負ってきた想いと、ようやく訪れた“別れの時”が交錯する、とても深く尊い時間に感じられました。
■ 「これからは、海がお墓」
散骨を終えた後、兄はこう語りました。
「娘には“うちはもう墓を持たない。海がうちのお墓だよ”と伝えます」
墓石という形を持たないことで、次の世代に引き継がせる負担を軽くする。それは“無責任な放棄”ではなく、“責任ある整理”の姿でした。
弟さんも、「これで肩の荷が下りた。兄貴と2人で見送れてよかった」と、感慨深そうに海を見つめていました。
■ 家族を想う供養のかたち
お墓じまいと海洋散骨は、形としての供養ではなく、“想いを託す供養”です。
この兄弟のように、自分たちの手で区切りをつけ、そして次の世代に“負担ではなく自由”を残す選択が、これからの時代にはますます求められるようになるでしょう。
お二人の姿は、そんな“新しい家族の在り方”を静かに教えてくれた気がします。
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