
はじめに
少子高齢化が進む日本では、「遠方に暮らす親が亡くなったとき」に直面する課題が増えています。大分県でも、親世代は高齢で、子世代は県外に住んでいるという家庭が多く見られます。いざという時にすぐに駆けつけられず、準備が整わないまま大きな判断を迫られるケースも少なくありません。ここでは、よくある困りごとを整理し、解決策を考えていきます。
困りごと① 親の交友関係が分からない
親が亡くなった際、まず必要になるのは葬儀の通知です。しかし、長寿社会のいま、高齢の親の交友関係は把握しきれないことが多いのです。
- すでに亡くなっている知人も多い
- 認知症や足腰の不自由により連絡が取れない人もいる
- 施設入所中で連絡がつかない場合もある
そのため、「誰を呼べばいいのか分からない」という状況に陥り、結果的に家族葬や直葬を選ぶケースが増えています。
困りごと② 病院からの遺体搬出は待ってくれない
多くの人は病院で亡くなりますが、病院は遺体を長時間安置することができません。すぐに搬送先を決めなければならないため、
- 急いで葬儀社を探す
- 比較する余裕もなく高額なプランを選んでしまう
といったことが現実に起きています。特に県外に住む子どもにとっては、病院からの突然の電話が「すぐに判断を迫られる」プレッシャーになってしまいます。
困りごと③ 墓じまい・仏壇処分の問題
さらに、「親の死後の供養」をどうするかという問題も発生します。
- 故郷にお墓があるが、後を継ぐ人がいない
- 仏壇が実家に残るが、誰も住まない
- 遠方からの管理は現実的に難しい
こうした背景から、墓じまいと仏壇処分を同時に進める家庭が増えています。墓じまいでは、墓石の撤去だけでなく、お墓の中の遺骨の整理が必要です。その遺骨をどうするかという点で注目されているのが、海洋散骨という自然葬です。
海洋散骨という選択肢
「遺骨を残さないのは後悔するのでは?」という声もあります。しかし、実は日本では昭和30年代まで土葬が主流で、遺骨を引き継ぐ文化はまだ新しいものです。昔は仏壇や位牌といった**形代(かたしろ)**に手を合わせ、供養と埋葬は分けて考えていました。
海洋散骨は、その原点に近い供養方法です。
- 遺骨を海に還すことで自然に融け込む
- 子どもに負担を残さない
- 故郷の海を「心の墓」としてどこからでも想いを寄せられる
といった理由から、大分県でも選ぶ人が増えています。
解決へのヒント
- 親の交友関係は早めにリスト化
生前に一緒に確認しておくと安心です。 - 終活の事前相談を利用
葬儀社や終活団体に相談しておくと、病院からの搬出時に慌てません。 - 墓じまいと仏壇処分の準備
子世代にとって負担となる「遺骨の管理」を、自然葬や海洋散骨で解決する選択もあります。
まとめ
故郷の親が亡くなったとき、子世代には想像以上の負担がかかります。
- 誰に連絡するか分からない
- 遺体搬出をすぐに決めなければならない
- 墓じまいや仏壇処分を考えなければならない
こうした困りごとを少しでも減らすためには、元気なうちから親と「もしものとき」について話し合っておくことが大切です。海洋散骨や墓じまいという選択肢は、子どもに負担をかけない思いやりのかたちでもあります。