「私はお墓を持たないことに決めました」——ひとり暮らしの高齢者が選ぶ“想いの継承”
大分県姫島村に住む80代の女性から、当協会にご相談がありました。
「私はひとり。配偶者も子どももおらず、姉の娘(姪)が私の面倒を見てくれているんです。その姪にこれ以上負担をかけたくない」
この女性は、生前にご自身の海洋散骨を予約されました。「亡くなったら姪にこの契約書を渡して、散骨をお願いしてほしい」と語っていました。姪からは、実家の墓に入るようすすめられたそうですが、「自分は他家の人間。私がその墓に入っても、いずれ姪が墓じまいをする時が来る。ならば最初から墓を持たない選択が、姪のためにもなる」と判断されたのです。
このように、自分の“死後”を誰かに託さず、自分の手で完結させようとする生き方は、まさに“想いの継承”そのもの。
人はひとりで生き、ひとりで旅立つ。けれど、誰かを思いやる気持ちを残すことはできる。海洋散骨は、「孤独」の中にある“他者への思いやり”をかたちにする供養方法でもあるのです。