子ども世代が直面する「仏壇じまい」という現実
「お前がこの仏壇を引き継いでくれるんだろ?」
そう言っていた父は、3年前に亡くなった。
仏壇の前に手を合わせる母の背中を、いつも遠くから見ていた。
けれど、その母もついに介護施設への入居が決まり、
実家を整理する中で、仏壇の行き先が問題になった。
「この仏壇、どうしようか…」
誰もが口をつぐむ。
でも、答えは出さなければならない。
受け継ぐ人がいない時代
仏壇は本来、“家”とともに受け継がれていくものでした。
代々、家の中心に置かれ、
ご先祖様への感謝と祈りの場として守られてきたのです。
しかし今はどうでしょうか。
- 子どもがみな県外に出ている
- 自宅に仏壇を置くスペースがない
- 信仰の習慣がない
- 夫婦のみの世帯、あるいは独身で跡継ぎがいない
こうした事情から、仏壇を「引き継ぐ人がいない」という現実に、多くの家族が直面しています。
仏壇を“処分”することへの抵抗感
それでも、「処分する」と口に出すのはためらわれます。
それもそのはずです。
仏壇は、ただの家具ではありません。
そこには、家族の歴史や祈りの時間、
亡き父母や祖父母とのつながりが詰まっているからです。
「処分」という言葉は、なんとも無機質で冷たい響きがします。
まるで、家族との思い出を“捨てる”ような気がして、胸が痛むのです。
「仏壇仕舞い」とは、祈りにけじめをつけること
そんなときに知ったのが「仏壇仕舞い」という言葉でした。
仏壇仕舞いとは、
仏壇を「丁寧に手放す」ための、心の整理のプロセスです。
たとえば──
- 魂抜き(閉眼供養)を行い、仏壇から魂を抜く
- 家族で集まり、仏壇の前で「ありがとう」と手を合わせる
- 専門業者に依頼して、適切に仏壇を搬出・処分してもらう
このような手順を経ることで、
仏壇と心の荷をきちんと手放すことができるのです。
宗派や考え方によって「魂抜き」は不要な場合も
なお、宗派によっては閉眼供養を必要としない場合もあるそうです。
たとえば、浄土真宗では「仏壇に魂が宿る」という考え方を取らないため、
儀式はせず、仏壇をそのまま手放す方もいます。
また、無宗教のご家庭では、形式にこだわらず
「手を合わせて感謝を伝えれば、それで十分」と考えることもあります。
もしかしたら、仏壇処分には“正解”はないのかもしれません。
大切なのは、家族が納得し、感謝を持って手放せるかどうか。それが何よりも大切なのでしょう。
実家じまい、墓じまい、そして仏壇仕舞い
親の死をきっかけに、実家の仏壇を整理する人が増えています。
大分市では仏壇は家具とは異なり、粗大ごみとしては捨てられません。金属と木材を分別し、仏壇だと分からないように50センチ以内にカットする必要があります。そこで、多くの方は専門の仏壇処分業者へ依頼して引き取ってもらうようです。
お寺とお付き合いのある家は少なくなってきました。ほどんどの家では、仏壇の前で静かに手を合わせて、
「お父さん、お母さん、今までありがとう」
そう感謝を伝え「閉眼供養」の代わりとするそうです。
この瞬間こそが、本当の“供養”なのかもしれません。
形式に頼らなくても、
心から「ありがとう」と言えたことで、
ようやく前を向くことができたという話を聞きました。
仏壇処分を進めるうえでの注意点
仏だん処分を進める際、次の3つのポイントを意識するとよいでしょう。
- 家族とよく話し合う
思い出や宗教観、感情の整理に時間がかかることもあります。焦らず丁寧に。 - 宗派の教えを確認する
閉眼供養が必要かどうか、菩提寺がある場合は相談を。 - 専門業者に依頼する
大分市のように粗大ごみとしては処分できない自治体もあります。安心・丁寧な対応ができる業者を選びましょう。
「供養」は、これからの世代へつなぐもの
仏壇を手放すことは、
先祖との縁を切ることではありません。
むしろ、
次の世代が“背負わなくていい供養”の形を選ぶことでもあります。
- 仏壇を持たない供養
- 海洋散骨など、自然に還る選択肢
- 手元供養など、暮らしに馴染んだ祈りの場
そうした新しい供養のかたちも、広がりつつあります。
最後に|大切なのは、感謝して手放すこと
仏壇をどうするか──
その答えは、家族ごとに違っていていいのです。
手を合わせ、
「今までありがとう」と伝える時間が持てたなら、
それだけで、きっと十分です。
仏壇じまいは、
家族の過去を否定することではなく、
未来へ向かうための、やさしいけじめの儀式。
もし、今その選択に悩んでいるなら、
誰かと一緒にその想いを整理してみてください。
大分県で仏壇じまいをお考えの方へ
私たち「一般社団法人まるっと終活大分支援協会」は、
仏壇じまい・墓じまい・海洋散骨まで、
やさしく寄り添い、心を整理するお手伝いをしています。
お気軽にご相談ください。
あなたの気持ちを、丁寧に受け止めます。
