先日、「これから御社に行きたい。お見送り海洋散骨の相談で、、、。」という電話があり、約束の時間までお待ちしていると、喪服を着たご兄弟が骨壺を持って来社されました。よくよく聞いてみると、先ほどお父様の火葬が終わり、その足で当協会にお立ちより頂いたとのこと。
さらにお話を伺ってみると、1人暮らしをしていた父が亡くなり、ご兄弟は県外に在住で、親戚が集まれるのも明日までなので、明日みんなで船に乗って父をお見送りしたいと言います。そこで急遽、スケジュールを調整して「お見送り海洋散骨」を執り行いました。
現代社会の変貌と海洋散骨への注目
現代のお墓と葬送のカタチは、家族の絆を象徴する場として長く受け継がれてきました。しかし、高度成長期以降、地方から都心部への人口流出や核家族化などの社会情勢の変化により、1人暮らしの高齢者が増えました。いま、従来のお墓と葬送のカタチに再考が求められています。特に都心部への人口流出は、家族が一緒に暮らすことの難しさを増しており、県外に暮らす親戚が一同に集まる機会は限定されます。限られた時間の中で故人を偲び、送り出す方法として海洋散骨が注目されています。
海洋散骨の依頼が増える背景
海洋散骨は、火葬後に遺骨を海に散布する方法で、自然への回帰という側面から支持を集めています。散骨を依頼する理由は多岐にわたりますが、最も大きな理由の一つが、家族が離れて暮らす現代のライフスタイルです。家族が集まる機会が限られているため、葬儀の日程調整が難しく、短期間で故人を送り出す必要が出てきます。海洋散骨は火葬後、翌日には執り行うことができるため、遠方に住む親族も参加しやすくなっています。
社会情勢の変化と葬儀の在り方「家族葬」
現代の社会情勢は、葬儀の伝統的な形式にも変化をもたらしています。人々が都心部に流出することで、地域社会に根ざした大規模な葬儀(一般葬)が行いにくくなりつつあります。というのは、遠方に暮らす子供は、親の交流関係までは知らないことが多く、親が亡くなった時に誰を呼んでいいのか分からないのです。そこで注目されているのが「家族葬」。親戚だけで故人を送り出す葬儀です。また、終活に対する意識の高まりと共に、生前に自らの葬儀を予約する人も増えてきました。その選択肢の一つとして、散骨を事前に決め、家族に負担をかけないよう配慮する動きも見られます。
海洋散骨のメリット
海洋散骨は、上記のような背景から見ると、いくつかのメリットがあります。
- 時間的制約の緩和: 家族が限られた時間しか集まれない場合でも、海洋散骨はスケジュール調整がしやすい。
- 自然環境への配慮: 環境への負担が少なく、自然に優しいという点でエコロジカルな選択肢です。
- 経済的負担の軽減: 伝統的な墓石や墓地の維持費用に比べ、コストを一番安く抑えることができます。
- 精神的な解放: 故人を自然の一部に還すことで、遺族の心に平穏をもたらすことがあります。
- お墓を持たない選択: お墓を承継しない方法です。
散骨は、現代の社会情勢に即した葬送の選択肢として注目されており、都心部への人口流出と家族のライフスタイルの変化に柔軟に対応しています。海洋散骨に限らず、故人とのお別れの方法は、時代と共に変わりつつありますが、その核にあるのは故人への愛と家族の絆です。海洋散骨は、故人との新たな形でのつながりを感じさせてくれる、現代にふさわしい送り方の一つと言えるでしょう。
ちなみに、世界では「海洋散骨」は一般的で、ハワイ、アメリカの西海岸では20~30%が海洋散骨、イギリス・フランスのヨーロッパでは海以外に川での散骨も認められ、台湾・中国のアジア圏では海洋散骨を推奨している動きもあります。