夫を亡くした60代の女性が、当協会にこう話されました。
「毎日が“空っぽ”でした。誰かと話していても、何かをしていても、心のどこかに夫の不在がずっとありました」
そんな彼女が選んだのは、夫の遺骨を海に還す「海洋散骨」。それも、代行ではなく、自分で乗船して送り出すというかたちでした。
船の上で、広がる海を前に、夫の遺骨を抱いて声をかけたとき、ようやく涙がこぼれたといいます。
「ありがとう。やっと、ちゃんと別れが言えた」
心理学では、喪失を受け入れるにはいくつかの段階があるとされます(否認→怒り→取引→抑うつ→受容)。その中で“お別れの儀式”は重要な役割を果たします。
海洋散骨は、形のない供養ではなく、“別れを形にする”プロセスです。広大な海に包まれて、大切な人が自然に還っていく姿を見守ること。それは、亡き人だけでなく、自分自身を解放する時間でもあるのです。
悲しみがなくなることはありません。でも、悲しみが“少しずつやわらぎ次のステージへ進む”——そんな道のりを、海洋散骨はそっと支えてくれます。