
大分県国東市からご依頼くださったのは、60代の女性でした。
3回忌を迎えたご主人を亡くされてから、ずっと深い悲しみの中におられたそうです。ご自身でも「心の整理がつかず、ずっと立ち止まったまま」とおっしゃっていて、心療内科に通いながら、日々をご主人と一緒に過ごされていました。
ご遺骨はずっと自宅で大切に保管されていたそうです。
「主人と離れたくない。でも、前に進まないといけないことも分かっている…」
そんな葛藤が、日々交互に胸を支配していたと話してくれました。
ご主人の実家には、すでにご両親が建てたお墓があり、今もご健在のご両親は「お墓に納骨してほしい」と望んでおられたそうです。
しかし、ご主人は生前、「自分はお墓に入りたくない、自然に還りたい」と口にしていたとのこと。
その気持ちを尊重して、「私の判断で海へ還そう」と、奥さまは決意されました。
子どもたちからは「いつまでも家に置いておくのはどうか」と言われたこともあり、自分の気持ちと家族の考えの狭間で揺れながらも、「これでよかったのかもしれない」と、そっと前に進まれる姿がとても印象的でした。
当日は、代行での海洋散骨となりました。
奥さまはご乗船されませんでしたが、私たちが心を込めてご主人を自然へとお見送りいたしました。
「見送ったあとは、少し肩の荷が下りたような気がした」とお話しくださり、どこかすっきりとした穏やかなお顔になられていたのが印象的でした。
「私も、いつか海へ還りたい」
ご主人と同じ自然の中へ、再びめぐり合うその日を静かに願いながら、新たな一歩を踏み出された奥さまの姿に、深い敬意を感じます。
これからも国東市をはじめ、豊後高田市、杵築市、日出町など、大分県内各地からのご依頼に、心を込めてお応えしてまいります。