
親の死で突きつけられる「実家」という現実
親が元気なうちは、実家は「いつでも帰れる場所」であり、心の拠り所でもあります。
しかし両親が亡くなった後、その実家は一変します。帰る理由がなくなり、空き家としての管理責任だけが子ども世代にのしかかるのです。
「仏壇やお墓もあるし、放っておくわけにはいかない」
「でも、県外に暮らしているから頻繁には通えない」
こうした悩みは、今や多くの50〜60代が直面する現実となっています。これが「実家じまい」という課題です。
実家じまいが避けられない理由
なぜ実家じまいが必要になるのでしょうか?理由はいくつもあります。
- 空き家問題
人が住まなくなると家は急速に傷み、数年で雨漏りやカビが発生します。放置すると倒壊や火災のリスクも高まります。 - 維持費と税金
固定資産税や光熱費、修繕費が発生し、誰も住んでいない家にお金をかけ続けることは難しいのが現実です。 - 兄弟姉妹の合意形成
実家を誰が相続し、どう活用するかで意見が分かれやすく、相続トラブルの原因にもなります。
こうした背景から、多くの家庭が「実家じまい」という決断を迫られるのです。
実家じまいとセットで考える「墓じまい」「仏壇処分」
実家じまいは単独では完結しません。家を整理する過程で必ず出てくるのが「お墓」と「仏壇」の問題です。
- 墓じまい:誰も守る人がいないお墓を整理し、遺骨を永代供養や海洋散骨に託す
- 仏壇処分:大きな仏壇を処分し、コンパクトな手元供養や位牌だけを残す
つまり、実家じまいは 「故郷じまい」への第一歩 であり、親の死後に必ず直面する「心の整理」とも言えるのです。
実家じまいを後悔しないための準備
突然、親が亡くなり、慌ただしく実家じまいを進めた結果、後悔するケースもあります。
- 遺品整理で大切な写真や書類を誤って処分してしまった
- 地元の葬儀社や不動産業者に言われるまま高額な費用を支払ってしまった
- お墓や仏壇の処分を後回しにして、結局さらに費用と手間がかかってしまった
こうした後悔を避けるためには、親が元気なうちから少しずつ準備を進めておくことが大切です。
たとえば、
- 親の交友関係や連絡先をメモに残す
- お墓や仏壇の希望を聞いておく
- 実家をどうするかを兄弟で話し合っておく
これらは将来の「心の負担」を大きく減らします。
実家じまいと海洋散骨という選択
実家じまいに伴い「墓じまい」をする家庭が増えています。
その際に選ばれているのが「海洋散骨」です。
海洋散骨を選ぶ理由:
- 遠方に住む子どもに負担をかけない
- 維持費が不要
- 海を見れば、どこからでも親を思い出せる
かつて日本では、埋葬と供養は分かれていました。土葬で自然に還し、手を合わせるのは仏壇や位牌といった「形代」でした。海洋散骨は、この自然葬の文化を現代に取り戻す方法でもあるのです。
まとめ:親のいない世界でどう生きるか
実家じまいは、親を失った子世代に突きつけられる大きな課題です。
そしてそれは、墓じまい・仏壇処分とも切り離せません。
親のいない世界をどう生きるのか――その答えを探す過程で、実家じまいや海洋散骨といった「新しい選択」に出会う人が増えています。
大切なのは「子どもに負担を残さないこと」と「自分が納得できる別れ方を選ぶこと」。
その準備が、後悔しない実家じまい、そして心の整理へとつながるのです。