墓じまいを選んだ母と娘の決断
先日、私たちの元を訪ねてくださったのは、79歳のお母さまと、49歳の一人娘さんでした。目的は、先日亡くなったご主人の遺骨を海洋散骨したいというご相談。お話を伺っていく中で、思いがけずもう一つの“問題”が浮かび上がってきたのです。
ご主人の願いは「海に還ること」
「夫はもともと“お墓はいらない”と言っていたんです」とお母さまは静かに話してくださいました。海が好きで釣りばかりしていたし、、、、。嫁ぎ先にはお墓がなく、ご主人は生前から「死んだら海に還りたい」と希望していたそうです。その想いを受けて、今回の海洋散骨という選択になったのです。
自然に還るというスタイルの供養は、今、少しずつ広まり始めています。のこされた家族が無理にお墓を維持する必要がないこと、費用や管理の負担が少ないこと、そして何より“自由なかたちで祈れる”という安心感が、選ばれる理由です。
実家に残された、もう一つのお墓
海洋散骨のご依頼を進める中で、ふとお母さまが口にされたのが「でも…実は、私の実家にはお墓があるんです」という言葉でした。
お母さまは5人きょうだいの末っ子。他のきょうだいはそれぞれ結婚して県外へ出ていたため、田舎の実家や山と一緒に、先祖代々のお墓を相続することになったのだそうです。
今はもう実家には誰も住んでおらず、帰るたびに一人でお墓の掃除や管理をする日々。「正直、もう足腰もしんどくて…10年ほど墓参りしていないの。」と笑いながら話すその姿に、“本当はずっと悩んでいた”ことがにじみ出ていました。
娘の胸の内「ずっと言えなかったけど…」
お母さまが話し終えると、今度は娘さんが静かに語り始めました。
「私、小さいころから思ってたんです。あのお墓、いつか私が守らなきゃいけないのかなって」
娘さんは都心で仕事をしており、年に数回帰省するのがやっと。お墓がある田舎まではさらに片道数時間。しかも山の中。「無理をすればできるかもしれないけど、それは“守り続ける”とは違うと思ってて…」その言葉に、お母さまも何度もうなずいていらっしゃいました。
最後に決めたのは、“かつての願い”
実は数年前、娘さんは一度だけお母さまに
「私の代になったら、お母さんのあのお墓は守れないかもしれない」
と打ち明けたことがあったそうです。
そのときは何となく話が流れてしまったけれど、
今回ご主人の海洋散骨という“お墓を持たない供養”を経験して、
「ああ、これも供養のひとつなんだ」と実感されたとのこと。
そして娘さんがこう言いました。
「父と同じように、母にも“残す負担”ではなくて、先祖も海洋散骨して欲しい。だから、母の実家のお墓も“終わらせる”のではなく、“引き継ぐ”つもりで墓じまいしたい。

墓じまいは、終わりではなく「引き継ぎ」
お墓を閉じる、というと
「ご先祖様に申し訳ない」
「親戚にどう思われるか不安」
と、戸惑いを感じる方も少なくありません。
けれども、今回のように、
“守りきれないものを無理に引き継がない”という決断は、
「今を生きる家族」を守る優しさでもあるのです。
そして何より、供養の心は、形ではなく想いの中にあります。
“お墓を持たない”ことが“供養をしない”ことにはなりません。
むしろ、想いを大切にするための選択として、墓じまいと自然葬があるのです。
墓じまいは「自分の代でできる思いやり」
この母娘が決断されたことは、
家族への“負担”を減らすためであり、
“想い”を引き継ぐための第一歩でもありました。
「父が海に還り、母の実家のお墓も手放せたことで、家族としての気持ちに一区切りがつきました。
心がすっと軽くなった気がします。」
娘さんのこの言葉が、すべてを物語っているように思います。
最後に
墓じまいは、終活の中でも最も大きな決断のひとつです。
でもそれは、家族のこれからを守る選択でもあるのです。
お墓を手放すことは、ご先祖様を忘れることではありません。
むしろ、“どう想いをつなぐか”を真剣に考えた証です。
今、墓じまいや自然葬を考える方が増えています。
もしあなたが、「私ひとりでは守りきれない」と感じているなら——
どうか一度、私たちにご相談ください。
あなたの想いに寄り添い、最適なかたちでお手伝いさせていただきます。
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