私は、特別養護老人ホームのソーシャルワーカーとして働いています。
勤務先の施設では、体が思うように動かせないおじいちゃん、おばあちゃんたちの容態を見ながら毎日を過ごしています。
寝たきりになった高齢者に会いに来る家族の様子を見ていると、ほほえましいと思う反面、「この家族が数ヶ月後、数年後にどうなるのか」と考えたりもします。
きっと、ここにいる高齢者の方々は、これから先この施設を出ることなく、最期を迎えることになるからです。
家族がいて、誰かに最期のご連絡ができる方はまだいい。
中には、身よりがなく1人「終の住処」としてここで生活している人も実際にいますからね。
「遺骨をどうするか」を生きている間に決めること
私が担当している、あるおばあちゃんの話です。
この方は結婚歴もなく、85歳になるこれまで独身おひとりで暮らしてきました。
実のお兄さんが県外で子ども家族たちと一緒に暮らしていて、年に数回ほど、いろんな手続きのために施設にいらっしゃいます。
これまで、病院と施設を点々とし、「資産は蓄えているし、最期は完全看護の住みよい所で過ごさせたほうがいい」と、お兄さんが施設へ申込にいらっしゃいました。
すでに、弁護士の先生に保証人となってもらっていたほど、日常生活は自分ひとりで出来ない状態。入所して1年経った頃に、意思疎通も難しくなり、弁護士先生には成年後見人になってもらって筆談で会話をしています。
施設でお預かりするお小遣いのこと、お買い物で買ったもの、福祉用具のレンタル、おむつ代の補助申請など、いろんなすべてのことを、お兄さんや弁護士さんに連絡して了解を取ります。
問題は、「自分が亡くなった後の遺骨と遺産をどうするか」。本人には根気強く弁護士さんが筆談で話をしますが、はっきりした答えが聞き出せません。
施設としても、ここをグレーにしておくわけにはいかないので、これから同じような境遇の方が入所された時のためにも、いろんな方法を考えておこうということになりました。
納骨をゆだねる先を求めて海洋散骨を紹介
これまでお話した方以外にも、家族が県外にいる方や、「老老家族(高齢者同士による夫婦)」の方、檀家に入っていない方などがたくさんいます。
そこで、ソーシャルワーカーとして、海洋散骨を1つの方法として紹介することにしました。施設として提携しているわけではありませんし、もちろん、ご本人の意思を確認してからでないと、勝手に進めることはできませんが、、、。
自然葬に関する本を読んで、「墓にこだわらず誰もいつでも故人を思い出せば供養になる」という言葉に感銘を受けたので、「私の独り言」として相談の時にお話するようになりました。
身よりがない方の遺骨を粗末に扱いたくないですし、遠く離れた家族にしても「家庭の事情で遺骨を引き取れない」といわれる方も多いですから。
実際に、私の話をきっかけにして、資料を取り寄せた方もいらっしゃいますし、お墓不足は結構深刻な社会問題のようですし。仕方なく、ではなく「本人も家族も満たされる方法」だと受け取ってもらえるようです。
「故人がゆかりある場所の自然に還るのも良いのではないか」と、話をするたびに思うようになりました。
私も自然葬してもらおうと思います
人に話をするたびに、自分のこととしても「お墓」を考える機会が増えました。
今は健康に過ごして働いていますが、そのうちに誰もが通る道。ですからね。
今の所、私が入れるお墓候補はあるのですが、そこに入って子どもに「あとはよろしく」というのも何だか可愛そうな気がしています。
なので、私は自分が生きた大分県の海で眠りたい。
お墓に「しまわれる」よりも、自由に自然へ解放して欲しいという感じでしょうか。それが、亡き者のあるべき姿のようにも感じています。
そして、問題は葬式です。身寄りのいないおばあちゃんのため、成年後見人が選んだのは直葬+海洋散骨のプランです。どちらも生前契約です。